モーツァルトのバイオリンソナタ

BGMとBGV

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モーツァルトのバイオリンソナタ

お勧めBGM -モーツァルト・ヴァイオリンソナタ-

ソナタとは

ソナタは楽器を使って演奏する曲で、歌う曲=カンタータとは別の狙いをもって作られています。

人が歌うための曲がカンタータ(交声曲)なら、楽器が歌うための曲がソナタ(奏鳴曲)だということですね。

“ヴァイオリンソナタ”は元々はヴァイオリンのための器楽曲として作られていたのですが、モーツァルトの時代には、ヴァイオリンとピアノの二重奏が一般的な形態となっていたようで、”ピアノとヴァイオリンのためのソナタ”とも呼ばれているようです。

オススメシーン

とっつきやすく、わかりやすい曲が多いということで、様々なシーンにぴったり溶け込んでくるのがモーツァルトの良さでもあるのではないかと個人的には思ったりしますが、街歩きBGMに良し、部屋で物思いにふける時のBGMに良しといった感じで、割と万能のお勧めです。

とはいえ、という部分として。

BGM/BGVのカテゴリでは、いい意味で割とその場の空気になるような音楽や動画をお勧めさせていただく機会がこれまでのところ多かったですが、そのように作業中のBGMとして捉えた場合、モーツァルトの曲にはかなりキャラが立っている曲が多いので、使いどころが難しそうではあります。

バロック期を代表する作曲家、J.S.バッハが作曲した曲のように、聞いているだけで背筋が伸びてしまうというような気分になることはあまりないと思いますが、いい具合にリラックスできてそれで終わりになるというよりは、ともすると自分の中に音楽が入り込んでしまって、その音楽にメンタルを持っていかれてしまうというようなことになりかねません。

作業のお供というよりは”作業がお供”という状態になってしまいがちで、”ながら”BGMとしてはその時その時の気分に左右されてしまう面が大きいと思います。

なので、街を歩きながら、あるいは部屋で何はともなく色んなことに思いを巡らせるとき、そういう”あとなにか一声あることで大分その場の空気が変わりそうだ”という時の最後の一押し的なBGMにおすすめです。

(以下、モーツァルトと楽曲に関する部分について、参考:Mozart con grazia “ピアノとヴァイオリンのためのソナタ“)。

ヴァイオリン・ソナタ 第30番 ニ長調 K.306(300l)

Bartje Bartmansチャンネルより)

曲の背景

ヴァイオリン・ソナタ第30番は、1778年に、パリで作曲されました。

当時のドイツ(神聖ローマ帝国の末期です)の文化活動の中心地であったマンハイムにて、プファルツ選帝侯妃マリア・エリーザベトに献上するために作られた曲のうちの一曲(3つの楽章からなります)であることから、プファルツソナタ、あるいはマンハイムソナタとも呼ばれているようです。

正確には、マンハイムでの経験に基づいてパリで作曲された曲だということのようですが、ヴァイオリンソナタではなく”マンハイムソナタ”と呼ぶ場合、この曲は6番にあたります。

イメージ

ヴァイオリンソナタ30番、あるいはマンハイムソナタ6番は、特に第一楽章が絶品です。

出だし10秒程度の曲調でガッチリ聴くものの心を掴んだ上で7分を超える曲が始まるのですが、最後まで聴き手の期待と想像を(いい意味で)裏切り続ける曲構成を持っているんですね。

アップテンポの華やかな雰囲気を持っていて、聴きはじめた瞬間に「あ、この曲当たり曲だわ」とわかる類のキャッチーな曲なので、その部分の魅力だけでも惹きつけられるのですが、さらに凄いのは「偶然の思い付きをなんとなくくっつけ合わせたら、たまたまこんな曲が出来ちゃいました!」ではなく、作曲したモーツァルト自身が全て把握し切った上で曲を作っているんだろうなと思える点です。

曲冒頭のフレーズはその後も繰り返し用いられるのですが、くどさはほとんど感じさせません。逆に曲に対して小気味良いテンポと飽きの来ないメリハリをもたらします。終わったと思ったら始まる、始まる度に聴かせてくれる、曲が進めば進むほど”終わり方”も華やかになる、曲のラストでいよいよそのピークを迎えるという感じで、最後まであっという間に流れていきます。

まずは出だしのフレーズで聴き手を魅了し、さらにそのまま曲の構成でも魅了するという、モーツァルトにはこういう「”つかみ”の部分で聴き手を引き付けたら、あとはこれでもかとばかりに意表をつき続けたままラストまで突っ走っている」曲が本当にたくさんにあるのですが、それでもこの曲を初めて聴いた時はホントにびっくりしました。

似たような魅力を持っている曲に、ヴァイオリンソナタの24番(Deucalion Projectチャンネル “モーツァルト ヴァイオリンソナタ第24番 ドルイアン&セル、特に第三楽章“)があります。

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