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“モンスター”は、スーパーバンタム級王座・二度目の防衛(WBA・WBC・IBF・WBO4団体)をTKOで決めました
参考:スポーツナビ “井上尚弥vs.TJ・ドヘニー“
7ラウンド、ラッシュをかけた井上尚弥チャンピオンのパンチを防御しながら後ろに下がった挑戦者・アイルランドのテレンス・ジョン・ドヘニー選手が、コーナー傍で腰を抑えながらギブアップ。
ワンテンポ遅れてレフェリーが試合をストップさせ、井上尚弥チャンピオンがTKO勝ちを収めると、チャンピオンも会場もしばし何が起こったのかわからないような反応となったという、ちょっとこれまでに見たことがない感じのエンドとなった試合ではあったのですが、序盤は井上尚弥チャンピオンの”圧”の強烈さがただただ印象的でした。
体格で上回る側が圧で気圧されるって、そうそうあることじゃないと思うんですよ。
単に技術的な問題でただただ相手に回り込まれ追い込まれていく展開だったのだと捉えても、それはそれでその時点で結構な実力差があるってことの表れではないかとも思いますが、いずれにしても、挑戦者はどう動いても常にロープを背負わされ続けてリングの中をぐるぐる回っている感じ、どっちが勝つか負けるか、どちらが優勢かというよりは、
「リングの上で井上尚弥を相手にする」ってことがどういうことなのか
それを見せつけられたような試合運びで、なんかすげえなこれ 笑、という試合展開でした。
相手も一応「井上尚弥とやれている時点ですごい」ことに違いはないのですが、そのことを差し引いたとしても、世界チャンピオンではありました。
弱いはずはないし、強いか弱いか言えば強いに決まっているわけですが、それでもなおこの実力差、という。
ただし、優位は優位なんだろうけど井上チャンピオン的にはいまいちかみ合わないのかな(?)とも感じられる状態から、だったらということなのか、相手に打たせる(?)ような試合の流れが訪れます。
結果論からいうのであれば、追い込むのではなく、次には誘い出すという感じですか。
もしかすると挑戦者側から動いた試合に井上チャンピオン側があわせていったという展開だったのかもわかりませんが、ともあれ、中盤に差し掛かってボチボチ打ち合いが始まる展開となります。
で、チャンピオンの怖さが見えたのはここからだったんですね。
一見色々貰っている、互角というよりはやや挑戦者側の手数が多いようにも見える打ち合いの中、パンチを数打たれているように見えなくもなかった井上チャンピオンがほぼノーダメ、反対にどちらかというとやや押しているように見えなくもなかった挑戦者側の体に、なぜか(?)ダメージが蓄積されて行っているように見えるんですよ。
相手が結構重そうなパンチをバンバン打っているように見える割には、打たれているはずの井上尚弥チャンピオンにはダメージの蓄積が一切ないようにみえる、どころかフットワークのギアが一段二段と上がっていくようにすら見えると。
ああそういうことかと、一つにはカメラワークの問題もあったのかもしれませんが、試合展開理解するのに少々タイムラグがあった感じですね。
挑戦者側の攻撃がほぼ完ぺきに封じられ、反対にチャンピオン側の攻撃がじわじわと、かつ的確に相手を追い込んでいったという展開でした。
その昔、“はじめの一歩”とか”B・B”などという名ボクシング漫画ではこういう試合展開、ボチボチ見たような記憶があったりなかったりしますが 笑、こういうの、現実の試合それもタイトルマッチでは始めて見たかもしれません。
挑戦者サイドからしたら、試合中盤に至って割と絶望的な気分になったんじゃないですかね、なんていうようなことを見ていて思いましたけど、実際のところはどうだったんでしょうか。
その結果のあのTKOだとするとなんとなく合点がいくようにも感じるのですが、後から振り返っても挑戦者側には万に一つも勝機がなかったように思えるところ、井上尚弥陣営的には幾通りかのシナリオを持っていて、結果的には全てが「計画通り」だったのではないでしょうか、という試合だったのではないかというように伝わって来ました。
次の防衛戦は年末=12月だということで、またまた試合を楽しみにしたいと思います。
関連:【ボクシング/スーパーバンタム級防衛戦】4団体統一王者・井上尚弥vsルイス・ネリ
24.9.7追記
試合観戦時に感じた、井上選手の”圧”についての解説がありました。
参考:Number Web “ジャッジ2人がドヘニー支持も…井上尚弥は4回までにインプット完了! 元世界王者・飯田覚士が「びっくりした」王者・井上の“揺さぶり返し””、”「ドヘニーは身も心も削られていた」元世界王者・飯田覚士が分析する井上尚弥の“打たせずに倒す”勝ち方…「あえて課題をあげるとすれば?」“
正体はといえば多分にテクニカルなもので、まずは技術的に追い込み、次いでそれが精神的なプレッシャーとなっていったようです。
“井上尚弥の凄さ”って、こういう風に、専門家の解説によって具体的になる部分からも鮮明に伝わってくる(=試合のパッと見では、そこで駆使されている高度な技術が私含む素人観戦者の目に伝わり切らない)ことが多いですが、こういうところ、二刀流が認知され始めた頃の(打者のレジェンドが打者大谷を、投手のレジェンドが投手大谷を、それぞれ技術的な面から推していたという)大谷翔平選手の状況をかなり彷彿とさせます。
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