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【MLB】NPB/MLBのレジェンド・イチロー選手の引退(2019.12.20)
2012年の開幕戦以降
2012年MLB日本開幕戦
2019年3月21日、2012年以来となったMLBの日本での開幕戦が、イチロー選手の現役最後の舞台でした。
ちなみに前回2012年のカードは今年と同じくシアトル・マリナーズvsオークランド・アスレチックスで、この開幕戦でもイチロー選手はマリナーズでスタメン出場(三番ライト)を果たしていますが、イチロー選手にとって前回MLBの開幕シリーズが開催された2012年は、シーズン最多安打のメジャー記録(262安打、84年ぶりの記録更新)を作った2004年から既に8年が経過し、シーズン200安打の連続記録(2001年~10年まで、10年連続)が途絶えた翌年でもありました。
全盛期に比べると、その時点で数字的にはやや衰えが見え始めた時期でもあったんですね。
もっとも、日本中がイチロー選手の決勝打に歓喜したWBC決勝戦が2009年だったこととも併せて考えれば、「前回の日本開幕戦」はそれからまだわずか3年後のことだとも取れるところで、開幕戦も含みなしの現役として警戒をされた状態で迎えています(結果、5打数4安打1打点の大活躍)。
また、この2012年の開幕シリーズは、イチロー選手の開幕スタメンと併せて、当時マリナーズに所属していた川崎宗則選手の開幕ロースター(ロースター=MLBの公式戦出場メンバー25人枠。日本での開幕シリーズに関しては特例の28人枠)入りが話題になったシリーズでもありました。
結局川崎選手もその後メジャーにぼちぼち定着し、メジャーの選手として見せ場を作ることもできた、北米でも人気選手となれたという結論とも併せて、中々華のあるシーズンの幕開けだったように記憶しています。
マリナーズ・イチローのニューヨーク・ヤンキース移籍
ところで2012年のイチロー選手個人の最大の話題といえば、シーズン途中にニューヨーク・ヤンキースへ電撃移籍したことでした。後から振り返ってみればメジャーでプレイするイチロー選手にとって、波乱の幕開けとなるシーズンでもあったんですね。
イチロー選手のヤンキースへの移籍年にあたる2012年シーズンのヤンキースは、ア・リーグ東地区で地区優勝を果たしますが、ポストシーズンにディビジョンシリーズ(プレーオフ)でデトロイト・タイガースに敗れてリーグ優勝は果たせず、翌年から2年間(=イチロー選手在籍中)は地区優勝、ワイルドカードとも無縁でした。
付け足すと、ヤンキースは今年2019年に2012年以来となる地区優勝を果たしましたが、やはりディビジョンシリーズでヒューストン・アストロズに敗退し、ア・リーグを勝ち抜けることが出来ませんでした(2019年のワールドシリーズは、ヤンキースを倒してWS出場を果たしたアストロズが制覇しました)。
ちなみに1901年創設、ワールドシリーズ優勝27回を誇るヤンキースはMLBを代表する名門チームですが、松井秀喜選手がMVPを受賞した2009年以来、ワールドシリーズ出場・優勝から遠ざかっています。
そんなヤンキースでの2年間+αをすごしたのち、2015年にイチロー選手はマイアミ・マーリンズへ移籍します。MLBのレジェンド選手として若手選手のいい手本となってほしい、そんな期待込みでの移籍だったマイアミでは3年間チームに在籍し、その後2018年にメジャー人生を歩み始めたシアトルへと移籍しました。
2018年のMLB、イチローから大谷へ
2018年、エンゼルス・大谷誕生
スター選手の移籍に関してはNPB(日本プロ野球)以上にマネーゲーム要素の強いMLBにあって、波乱の後の原点回帰というだけでもドラマチックなのですが、2018年マリナーズに復帰したイチロー選手の周囲にはもう一つの話題がありました。
NPBで数々の常識を覆してきた”二刀流”大谷翔平選手が、イチロー選手の所属するマリナーズと同じくア・リーグ西地区に所属するカリフォルニア・エンゼルスへ、ポスティング・システムによって移籍することになったという話題です。
「もう全盛期イチローのような突出した選手は、日本からは二度と出ないだろう、出てくるにしても50年100年先の話しになるだろう」なんて話しがそこかしこでされるようになりはじめたころが懐かしく思い出されますが、イチロー選手の現役最晩年に、思わぬ形で”早くも”そのまさか(MLBでイチローの後継的実績を残す可能性のある、NPBで突出した成績を残したMLB日本人プレーヤーの誕生)が起こってしまったわけです。
しかもエンゼルスもマリナーズも共にア・リーグ西地区(2019年は19試合の対戦がありました)だということで、シーズン中アメリカ西海岸で対戦する可能性まで出てきたわけですが、イチロー選手は2018年開幕早々、そんな周囲の期待をあっさりかわすかのようにしてマリナーズのスペシャルアシスタントアドバイザー=球団会長付特別補佐という役職に就任、事実上現役引退をしたような状態になってしまいました。
本当のところどうだったのかはわかりませんが、どこか「大谷がア・リーグ西地区に来たから」こそそうなった(新旧の世代交代が”すれ違い”で成立した)のではないかとも見えてしまう功労者・イチローへの待遇の後、運命の2019年開幕シリーズを迎えるわけです。
2019年開幕シリーズとイチロー現役引退
今年2019年の開幕シリーズ。かつてと同じマリナーズでの出場であるとはいえ、イチロー選手にとっての2019年はまた、2012年に始まる波乱の延長にも位置しています。前年2018年シーズンの待遇とも併せて状況判断するのであれば、どこか終の球団での最後の花道っぽく見えないこともなく、初めから一面においてある種の寂しさが見え隠れした来日ではありました。
そもそもシビアなファンの目が開幕戦出場自体に何か期するものがあったとしても、それはかつてのイチロー選手への期待とは全く異質のものだったわけです。
「この開幕シリーズの結果次第では、もしかすると今年一年『だけ』はあるかもしれない」、表現を変えると「開幕で結果を残せなければ、もう出番はないだろう」というような、現役続行に対する背水の陣のような寂しさですね。
もっと具体的に言うと「引退のタイミングはどこなんだろう」ということですか。
その開幕シリーズ初戦である3月20日の試合に出場したイチロー選手は1打数無安打1四球、つまりはノーヒットで途中交代します。かつてと比べたらやはりという成績でしたが、まだ初戦だしという、そんな「ノーヒット」の余韻冷めやらぬうちに突如来たのが引退報道でした。
後から振り返ってみると、仮にこの試合で猛打賞の結果を残していたとしても引退していたのではないだろうかとも思えてくるくらいの潔さでもありましたが、21日付朝刊でイチロー選手のノーヒットを報じたメディアは、翌22日付朝刊でイチロー選手の引退を報じることになりました。
本当に、あっという間の話しでした。
イチロー選手引退とその後
ちなみに、2019年にポスティングシステムによってマリナーズに移籍した元西武ライオンズ・菊池雄星投手がこの開幕シリーズに帯同していましたが、入団早々「イチロー引退」を目の前に見て号泣した菊池投手、今年6月には高校(花巻東)の後輩であるエンゼルス・大谷翔平選手とア・リーグ西地区で初対戦します。
平成の最後を締めた「レジェンド」の現役引退に続いて、令和元年のシーズンでは早速「次の世代」の活躍が始まっていったわけですが、そんな中、令和元年12月に入ってイチロー選手の学生野球資格回復研修受講と修了が話題となっています。
MLBでも指導者ポストはあるでしょうし、NPBの指導者になることを望んだとしても引く手あまたであろうレジェンド選手が、仮にそこをすっ飛ばして本当にアマチュアの指導者にという話であれば、ここにまた新たな「何か」が始まるのかもしれませんね。
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