【冤罪疑惑下での再審/袴田事件】検察側が改めて死刑を求刑 弁護団は無罪を主張

ニュース一般

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

その上での無罪判決が想定されてはいるようですが

ほぼ無罪確定の再審だと言われているとはいえ

参考:NHKニュース “袴田巌さん再審 検察改めて死刑求刑 弁護団は無罪主張“、TBSニュース “「おかしいだろ!」と支援者から非難の声も 検察は袴田巌さんに死刑を求刑 袴田事件の再審公判

法治国家として無罪を権威づけるため「一応裁判の形を採る」という話しに過ぎないことではあるのでしょうが、だとしてもここで改めて死刑を求刑するという検察側の姿勢には、率直に、ものすごく引っかかるものを感じます。

曰く、

「袴田さんを犯人だと疑うに足る証拠は十分にある」

「被害者4人の将来を一瞬にして奪った犯行の結果は極めて重大。強固な殺意に基づいた極めて冷酷で残忍なもの。被害者4人や遺族の無念は計り知れない」と。

あるいは「そういう風にしてこい」という、内輪の各方面からの”圧”もあるのかもしれませんが、そうやって進められた捜査に基づいた結論に疑義が生じている、極論すれば「君たちのやり方と結論は間違っていた」と言われているに等しい状況下にあるのが、今の段階の話しなんでしてね。

この現状を全く認識できていないかのような対応自体、ある意味”令和に残る悪しき昭和”の残滓みたいなもので、普通にヤバすぎるでしょう。

そこで言われる”証拠”の信頼性、ひいては”死刑判決”の正統性自体が疑われているからこそ今回の再審に繋がることになったんでしょうということで、この期に及んでも未だそれを言うのですかと、今更ながらそんな印象のみが強く伝わって来るといった求刑ではありますね。

警察組織に対しては、ことまともに機能している側面を重視するのであれば、一般市民感情としては感謝してもしきれないものを感じる部分がある反面、それでもこういうところを見せられてしまうと、率直に恐ろしさを感じてしまう面も出てきまうのが毎度のこと。

そもそも警察組織の”冤罪”事件は、無辜の一般市民を犯罪者に仕立て上げて刑務所に収監(あるいは拘置所に収容)し、刑に服させている(あるいは科刑のために身柄を拘束している)上、”真犯人”を市井に泳がせているということで、二重の失態に当たります。

要は、ミスをミスとして認めるという姿勢が、通常以上に求められる組織であってしかるべきなのですが、実際のところは過ちを過ちとして認めることすら出来ない、メンツ(あるいは表に出せない利害)に拘泥するあまり、深刻な誤答ですらゴリ押そうとするのが組織の常識となっている風も感じさせます。

こうなってくると、この手の降って湧いたようなとてつもない不幸にしても、組織の身内以外のすべての人間にとって明日は我が身、他人ごとではないって話になってくるんですね。

常軌を逸した取調

無期懲役確定からの再審によって無罪が確定した足利事件(参考:【未解決事件】横山ゆかりちゃん誘拐事件と、北関東連続幼女誘拐殺人事件)においても、取り調べ時には苛烈な拷問が繰り返し行われ”真実”が捏造されたという形跡があったようですが、その点は袴田事件においても然りです(袴田事件について、参考:袴田さん支援クラブ “袴田事件とは“)。

というよりは、足利事件と比べても、明らかに袴田事件は異次元なんですね。

特に袴田さんが逮捕された当時の静岡県警は、取り調べ時の拷問や”自白でっち上げ”に関しては筋金入りだったともいわれていて、実際に取り調べについてのすさまじい記録も残されています。

時間だけ取り上げてみても一日平均12時間、最長で16時間20分に及んだようですが、参考までに現在(平成23年時の発表による)だと一日の平均取り調べ時間は約2時間、一回当たり同1時間程度、一件の事件についての平均取り調べ時間が15時間程度(拘束日数は約5日程度)に当たるようです。

それが袴田事件の場合、逮捕後3日間(72時間)+最大にあたる20日間の拘留期間中、連日(計23日間)続いたとされています。

“一日平均約6~8倍”というボリューム的にも常軌を逸していますが、内容的にはさらに調書捏造のための拷問が常態化していたことも指摘されています。

起きている間中ほぼ取り調べ、内容としては「身に覚えのない事件に関する、作られた自白強要」のための拷問が大半を占める、その先で待つのは”死刑確定”の判決へと続く裁判ですって、まあ、控えめに言ってもこの世の地獄というに相応しい現実ってことになりそうです。

参考:袴田さん支援クラブ “冤罪の証拠02~自白“、警視庁 “警察における取調べの実情について

そもそも袴田さんの取り調べには、”昭和の拷問王”などと揶揄される悪名高い警官の部下が関与していた事実も指摘されています。

“拷問王”その人ではなく、部下の関与ですね。

元々は優秀な刑事だったという”拷問王”は、自身の捜査上のミスを契機とした(と見られている)闇落ち後、戦前・戦後に渡っておびただしい数の冤罪事件を創出することになり、やがてそのやり方が”部下”(例えば袴田事件の取り調べ担当刑事など)へと引き継がれていったようです。

袴田さんが逮捕された当時の静岡県警は、恐ろしいことに、まだその”拷問王”のメソッドを知る現役警官が残っていた時代でもあったようですが、そのような事情を前提とするのであれば、発生すべくして発生してしまったという痛ましい冤罪事件だったんですね。

参考:中央公論 “静岡県で冤罪事件が多発したのはなぜか。その背景にいた『昭和の拷問王』の正体に迫る

判決は?

再審は結審し、判決は後日ということになりますが、さすがに無罪判決は堅いのでしょう。

ちなみに”無期”から無罪となった足利事件では、検察側は無罪の意見を述べたようですが(参考:日弁連公式サイト “足利事件“)、袴田事件においても、その辺可能な限りでスッキリした状態からの”無罪”となってほしいところではありました。

タイトルとURLをコピーしました