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戦後一貫してなのか、ごく一時期に過ぎないのか
2020年代の秋葉原
“オタクの街・アキバ”が衰退した、…というのは、それが事実かどうかはひとまずさておくとして、少し前(コロナ騒動あたり?)くらいから割としばしば見かける話題の一つです。
結局は”オタク”の定義によってどうとでも取れますということにもなるのかもしれませんが、オタクの街・秋葉原は本当に終わってしまったのか。
さらに、秋葉原は今後もオタクの街であり続けることが出来るのか。
いわゆる“オタクの街・全盛期”だった頃の(90年代後半~00年代前半頃の)秋葉原は、確かに稀有な魅力を持つ楽しい街であり、都内でも好きな街の一つではありました。
電気街イメージの延長線上で突如として実体化した、ある意味夢の街でしたからね。
夢の街、すなわちクリエイターの創造物がそのリアルを左右していた街だったということですか。
昨今の”アキバ衰退論”って、あの盛り上がりがさらにヒートアップした上で今に繋がっているのか、それともそうでないのかが常に主要な論点になっているようにも伝わる、つまり相対的な評価に終始しているきらいがあるように見える節が、無きにしも非ずです。
であれば、巻き返せるのであればそれもまた良し、このまま衰退していくのであればそれもまた良し。そこは成り行きに任せてあるがままを味わうのが一番なのではないかな、なんて改めて感じます。
(2025.3.8 加筆修正)
秋葉原と”オタク”
秋葉原は元々戦前以来の”電気の街”だったことから、戦中・戦後の混乱期を経て”電気街”としてのスタートを切ると、主に当時の家電需要に応える形で高度成長期を通じて成長し、昭和後半~末期には全盛期を迎えます(※)。
概ねそのあたりが、秋葉原の本流ともいえる成長の跡ですね。
その後平成期に入り、家庭用ゲーム機やPC、さらには周辺AV機器の普及という”本流”が作った流れに乗る形で起こったのが、ハードを媒介した”ソフト”による火付けです。
ここに始まるのが、突然変異ともいえる”オタクの街”としての秋葉原への流れでした。
元々”電気の街”としてのマニアックな華、あるいは個々の最新家電がもたらす刺激的な華はあったにせよ、どちらかと言うと工学部や工業高校、あるいは工業系専門学校といった理系側のオタクが幅を利かせていたようなところに、アニメ・ゲーム・漫画という“電気”に拘泥しないコンテンツのオタクが集まるようになった、結果”華”のあり方も変化するに至った感じですか。
そもそもということで記憶を辿ってみれば、“ゲーム・アニメ・漫画”等々の街としての盛り上がりの黎明期である90年代前半期(平成初期)に言われていたことって、「最近の秋葉原ってなんか変わってきたよな」みたいなことではあったのですが、要するにそれが秋葉原という街の昔からの姿だったというよりは、概ね90年代後半あたりから00年代辺りまで(平成中期~後期)という極々一部の期間、奇跡的にそういう特殊な街としてのピークを迎えた時期があった、と捉えるのが正確なところでもあるのでしょう。
こと”ピーク”だけを取り上げるのであれば、少なくとも秋葉原の歴史の中では極々短期間の賑わいだったんですよね。
参考
- 秋葉原電気振興会 “秋葉原アーカイブス“(※)
日本のオタクと海外のオタク
ただし、という部分として。
“オタクの街”が一般的にも騒がれるようになり、かつ”オタク”にカテゴライズされるなんらかのあり方が市民権を獲得したのは、第一には海外からの一部訪日客、つまり海外の”オタク”たちに”アキバ”的なコンテンツ(ゲーム、アニメ、漫画等々)、さらには秋葉原の街自体が抜群にウケたからでした。
続く事情としては、その勢いに便乗したマスコミ、政治家、役人等々が”アキバ”を起点としたサブカル一般に”cool Japan”のお墨付きを与えたことも大きな理由となりますが、世の風潮として”オタク”が単なる蔑称の域を出たのも、概ねこの頃からではなかったでしょうか。
つまり日本のオタクが海外のオタクに救われる形で市民権を獲得したのも、なんだかんだで(日本産コンテンツの質に裏打ちされた)”アキバ”の盛り上がりあってこそだった、そういう動きが色々ひとまとめになっていた部分があったからこそ、単なる街の盛衰それ自体に留まらない、”オタクの街・秋葉原”への思い入れが出てきているのではないかというようには感じます。
たかが一時期、されど一時期なんですよね。
オタクの街・秋葉原の衰退とは
やはりその分、かつての在り方が衰退へと向かっていく傾向には、色々な思いが錯綜することになって来るのでしょう。
この場合はもちろん、街が完全に死に体へ向かっているといった意味ではなく、単に(?)オタクたちが前ほどアキバを推さなくなった位の意ですが、その意味での”下降線”へのターニングポイントは概ね盛り上がりのピーク(00年代半ば以降、10年代前半)に隣接しているとみられることが多く、理由については、
- ネット通販が発達したから、結果的に現地の商売の規模が縮小していった
- はじめは細々楽しまれていたはずのコンカフェ(ex.メイド喫茶)等の数が、適正数を超えて激戦化していった(露骨な商売や非合法な商売も増え、巡り巡って治安が悪化した)
といった辺りが恐らくは万人の見解が一致するあたりではないかと思えます。
ほかにも、
- 中央通りにドンキが来たから
- ヨドバシカメラが秋葉原に進出したから
等々が理由として挙げられる機会も、それが的を射た見方になっているかどうかはさておき、多々あったように記憶しています。
要は、経済で言うところの”ミクロ”的な部分の事情(購買者の消費スタイルの変化や、客層の変化による選好自体の変化)が災いしたんだと捉えられることも多かったという話しではあるのですが、その他、当時の秋葉原が再開発の対象エリアとされていたという事情が“オタクの街”にとって吉と出なかったことも、かなり大きな理由ではあったでしょう。
“再開発”はつくばエクスプレス開業(05年8月)に伴うもので、ほぼ同時期には駅前にUDXが開業するなど、秋葉原という街自体が大きな改変期を迎えていました。萌えだオタクだという風潮的な部分、あるいはコンテンツだコンカフェだという商業的な部分とは別に、“街としての秋葉原”の構造自体が変わり始めていたのだということですが、思えば秋葉原駅前にあったラーメンの名店”いすず”が銀座に移転したのもこの頃の話しでした。
秋葉原と”成熟したオタク文化”
かつてのサブカルチャーが国の後押しを受けたメインカルチャーの一端となり(※)、かつ秋葉原の街自体が変革の時を迎えることになった時期はまた、かつては秋葉原に求められていたはずのものが各々の作品の”聖地”に求められるようになったという、新しい動きが始まった時期でもありました。
今では”地方の町おこし=アニメ、ゲーム“という形が割と鉄板になりつつあるところもありますが、このことをアキバ起点で見た場合、成長した”オタク文化”が秋葉原という”ハブ”を必ずしも必要としなくなったということでもあるのでしょう。
アキバの街がかつてに比べて(平成期に言われた”オタクの聖地”的な意味では)衰退したこと自体、残念ながらどうやら事実でもあるようですが、それでも”かつてのオタクたちが一杯飲みたくなる街”として秋葉原の明日が繋がれていくことになるのであれば、それはそれで一つの洒落た推移、変化ってことになりそうです。
参考
なんとなく、今の秋葉原にピッタリくるように思える一冊
西村京太郎『浅草偏奇館の殺人』(文春文庫、2000.1.7)
“エロ・グロ・ナンセンスが一世を風靡する昭和7年の浅草六区”が舞台とされた猟奇(?)ミステリで、かつてギラついていた”浅草六区”が鮮明に、今現在の浅草がややくすぶり気味に描かれているあたりが、謎解きに勝るとも劣らないという本作のメインの味わいどころです。
翻って、そう遠くない将来、いずれは今の秋葉原にも”浅草偏奇館”でいうところの浅草六区に該当するような未来が訪れることになるのかもしれないと考えると、それはそれで心に沁みてくる一面があるようには感じました。
“エリアとしての浅草”は”エリアとしての秋葉原”の隣町でもあるのですが、ここに隅田川や上野公園界隈、さらにはアメ横や御徒町あたりの街歩きを追加すれば、”下町欲張りセット”の出来上がりですね。
ということで、古き良きをかみしめたい気分になったときの、おすすめ書籍でした。
ところで・・・。
追伸:2020年代の秋葉原(オススメYouTube動画)
Active Otaku Channel “【コロナ前後】秋葉原は本当に衰退している?【総集編】”
それでは、まさに今のアキバの本当のところはどうなのか。
ここでオススメさせていただくのは、まさにそのままのタイトルがついている”今の秋葉原紹介動画”です。
“コロナ禍前後を比較する”(コロナ禍を経てアキバはさらに衰退していると巷では言われているが、それは果たして本当か?)という検証動画ですが、結果としてはとても楽しい動画になっています。
今の秋葉原を楽しむことが出来たらからこそ作れた動画なのだということでしょうが、なんてことはない、それはさすがに全盛期と比べたら(以下、野暮な部分省略)ですが、今でも普通ににぎやかに栄えている、むしろ今だからこそという秋葉原を味わうことが出来るということを、この動画が教えてくれます。
個人的には「むしろコロナ前と比べるとボチボチ復調傾向が出てきている面もある」ことが衝撃でした。
このあたり、やはり「衰退が言われたところで、結局は東京23区」なんですよね。
実際、YouTubeで”秋葉原”で検索すると、今でもものすごい数の新作優良動画がわんさか出てきますし、一つ一つの動画が醸すわくわく感にも結構なものがあります。結論としては「今でもまだまだいけます」「今のアキバは今のアキバで、十分楽しいです」というところに落ち着きそうです。
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