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複数人での使用が不可となり、新たに(利用開始日から連続する)3日間・5日間用の二種が発売される模様なのですが
参考:JR東日本公式 “「青春18きっぷ」「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」 の発売について“、NHKニュース ““青春18きっぷ”利用方法変更へ 複数人での利用など不可に“ほか
今回の改編は概ね”改悪”と捉えられたうえ、既にネット上ではリニューアル中止を求める署名活動なども始まっているようです。
ぱっと見「へー、なるほど」という程度の変更に見えて、その実ちょっとよく見てみると「おいおい 笑」って感じの変更になっているのですが、以下、主要な変更点を3つ、それに対して思うことを2つほど、まとめました(詳しくは、上記したJR東日本の公式サイトのPDFに、変更点その他18きっぷの概要が記載されています)。
複数人での利用廃止 -自動改札対応優先-
18きっぷ旅をしていて”同好の士”らしき人を見かける場合、性別問わず、成人かつ一人旅が多めだったりするのですが、極稀に、18きっぷグループ旅(らしきグループ)を見かけることもあるにはありました。
そんなところからは、元々そこまでだったっけ?(いうほどグループ客多かったっけ?) とは感じますが(いずれどこかで記事化する予定ですが、24年冬に発売された”新幹線一日フリー切符”である”JR東日本たびキュンパス“は、まあ色々すごかったです 笑)、今後は夏の普通列車旅の風景にしても、さらに変わっていくことが考えられる、ということではあるのかもしれませんね。
ちなみに今回改編にするにあたっては、一枚の切符で自動改札対応を考えていく(是が非でもそれを進めたい)ために、まずはここが犠牲となったのだ、ということのようです。
逆に、それほどグループ客が多くないと見越した上での改編だったのかもしれません。
確かに、一々有人改札を通過する必要があったという点については、面倒といえば面倒だと感じることもあったのですが(特に、駅混雑時の改札通過ですね)、かといって変更を期待するほどのストレスになっていたかといえばそんなことは全く無かった、でもそれが可能となるのであれば、それはそれでそうしてほしいというのが本音になってくる部分でもありますね。
利用期間が「任意の5日」から「連続する三日間」「連続する五日間」に変更
今回の改編で、恐らくは一番の反対が集中するであろうポイントがここです。
“任意の5日”(利用期間内の好きな5日)が“連続する5日間”(スタート日から、スタート日を含めた5日間)となると、18きっぷ旅には原則としてボチボチ緻密なプランと集中的な乗り鉄旅が要求されるところとなる、そういう18きっぷ旅もありといえばありだろうけど、もっとゆっくり日を分けて乗りたいなぁ、などと思う層にとって、改編後の18きっぷはほぼ確実に割高かつ使い勝手が致命的に悪い切符となります。
個人的にはそういう(きちんとプランした上で、集中的に乗り鉄しまくるような)旅が好きなので、買うとすれば5日間用で、するとすれば3~5日間ぶっ続けの旅になることが多い、つまりはぶっちゃけた話し今回の変更にはあまり影響を受けないといえば受けない層に入って来るのかもしれず 笑、ということにはなりそうなのですが、集中的に乗るにしても、切符が一枚二枚あまるというのはボチボチなくはないことです。
“余り切符”を使って夏の終わりに日帰り旅をするというのも(春や冬でもやれなくはないですね)、これまでであれば普通に”アリ”だったパターンではありますが、少なくとも今冬はそういう旅が出来なくなるほか、例えば普通列車の旅で地方へ出て、そこで乗り鉄を一旦お休みした後に改めて地方鉄道の乗り鉄旅を再スタートする、みたいなプランの組み方も出来なくなります。
要するに、18きっぷの魅力だった、ゆとりある旅の柱となる利用が不可になる、ということですか。
結果、人が切符を使う旅ではなく、人が切符に使われる旅になることも考えられなくはない、ともすると切符に縛られる旅になりかねない、結論として「18きっぷ旅とは?」みたいな状態になってしまう可能性が高くなってしまうことが考えられます。
ただ、今回の改編で変更された「連続する三日間・五日間」の縛りについては、あくまで自動改札の性能にあわせた結果の改編だったということらしく、前記した「複数人での利用が一旦不可となる」点とも合わせ、恒久的にこうなるべく規定されたというよりは、あくまで試験的にこうなったに過ぎず、先の予定については現段階では不透明となっているようです。
ここはさすがに、早急なる自動改札機の性能アップを期待したいところですね。
参考:日テレニュース “青春18きっぷ改定『5日間連続使用のみでの仕様に変更』 これまで利用期間中は5日分を自由に使用可能が… 3日間用の切符も登場 試験的に導入“、”人気の「青春18きっぷ」リニューアルのワケをJRに聞いた 自動改札可能に 3日間用も新発売 一方、新たな“制約”も“
5日間12050円、3日間10000円という価格設定(後者は適正?)
新規に規定された料金設定については、5日間が12050円(従来通り)、3日間が10000円です。
5日間用の使い勝手が悪いなら3日間用を二つ買えばいいじゃないか、という抜け道を塞ぐかのように行われているのが、三日間用の18きっぷの価格設定なんですね。
3日間用を二枚買うと6日間で20000円、これに対して5日間用の18きっぷは12050円ですということで、利用期間が一日増えるだけで10000円近く値段が上がります。
同条件の秋の乗り放題パス(9月中旬~10月中旬、連続する三日間のJRグループ各線乗り放題チケットで、大人7850円)と比較したとしても、結構な強気価格となっていることが伺えますが、この点についてはもう一つ、現在のJRの運賃体系の中にあっての”18きっぷ”の価格設定自体がどうなのか、そもそも“任意の5日間全国フリー切符”の価格が12050円ですという値付け自体に宿る”破格”感を無視できないのではないかというところもまた、一つの重要なポイントとなっています。
軸足を”これから”に据えるか”これまで”に据えるかで答えが両極(これまでが安すぎたか、これからがボッタクリか)になってくるということですが、思うに後者の値付け(3日間のフリー乗車で10000円)こそが、JR的な今日日の適正価格なのでしょう(ちなみに”乗り放題パス”は、若干値上がりしているものの、ほぼ2012年に設定された価格で継続しています)。
ここについては、自分自身の捉え方をアップデートさせるべき部分なのかもしれません。
そもそも、どうしてこうなったか -悲観論の根拠?-
国鉄末期にあたる1982年、現在とは別の名前を持つ切符(青春18のびのびきっぷ)として発売が開始されたという”青春18きっぷ”は、早い話し日本国有鉄道=国鉄として全国を一括運営していた時代の遺産のような企画切符です。
元々地域ごとに分割運営しているという現在のJRグループ各社とは相いれない切符でもあったのですが、“18きっぷ”誕生の5年後にあたる1987年に国鉄が解体されてから、今年2024年ではや37年目です。
一例として、JR東日本の社員の平均年齢が大体35~40歳、平均勤続年数が十数年であることを参考にして、定年を60歳でカウントする場合。
既に「国鉄時代を知る人」の方が少なくなって久しいことが推定される(今のJRで国鉄時代を現役社員として知っているのは、一番若くても定年間近、50代半ばの社員です)、という状態になっているのもまた、昨今の現実です。
少なくなって久しいというよりは、理論上はほぼいないとした方が正確なのかもしれません。
そうであれば残るのは「国鉄時代の雰囲気を色濃く持った18きっぷ」への違和感だとなってもなんらおかしくもないところで、ことと次第によっては「青春18きっぷなる切符が未だに存続していること」の方に疑問を感じる社員が増えたとしても、それはそれで自然な流れでもありそうです。
もちろん、“18きっぷ”がJRグループの人気商品であるうちは存続が前提となるでしょうが、仮にひとたび不採算となれば、真っ先にテコ入れすべき事業の一つにカウントされたとしても、なんら不思議は無さそうなところですからね。
かつての花形列車である”ブルートレイン”や”寝台列車”が次々消えて行った理由と軌を一にするところともなりますが、ドル箱であるうちはともかくとして、そうでないならそれはそれ、これはこれって奴でしょう。
このあたりの事情を悲観的に捉えた場合。
すでに巷で噂となっているように、今回の改編は近い将来の廃止(あるいは規模縮小)を見据えた改編だと捉えることも可能なのかもしれず、もしそうであれば、成り行きの流れに無理に抗おうとするよりは、次なる進化に向かう動きを粛々と受け入れていくべきターンなのかもしれません。
今夏の18きっぷの告知が遅れたことを今改めて一連の流れとして振り返れば、なるほどと納得できるものが出てくるところでもありますからね。
なのですが・・・。
“青春18きっぷ”の廃止が近づいているって、本当? -それは無いと思います-
諸々合わせて判断した場合、あくまで私個人的にはそう感じたという次元の話でしかありませんが、近い将来18きっぷが廃止になるというようなことはまずないのではないでしょうか。
そんな風に、割と強く感じます。
前記したように、18きっぷの概念自体、元々が地域ごとに分割経営されているというJRグループの在り方とは相いれない、国鉄時代の遺産そのものだという性格を持つものです。
つまり、ひとたびJRがこの切符を廃止してしまったら、改めて同じくらい強力な企画切符を作り直すことはまず不可能なのではないかと思うのですが、そんなレアな切符の人気がいまだに根強いものであることが事あるごとに確認されたのが、今年2024年でもありました。
常識的に考えれば、この一点(=切符の人気を再確認できたという点)だけを取ってみても、余程の事情でもない限り廃止になることはあり得ないのではないかと感じますが、余程の事情とは要するに、存続より廃止が合理的だと考えるに足るだけの事情のこと、より具体的には現実問題としてあり得ないくらいの赤字垂れ流し切符になっているとか、そういうとんでもない重荷となっているような事情がセットになっている場合ですね。
ですが、そもそも18きっぷの存続がJR各社に莫大な赤字を垂れ流すような要素って一つもない、どころかむしろ一説によると、滅茶苦茶利益率がいい(と、推定される)切符でもあるらしいんですね 笑。
参考:鉄道協議会日誌 “青春18きっぷは廃止されない?JRからみたフリーきっぷの存在感“
発売期間になったからと切符を売りに出したところで、JRとしてはほか、そのために特に何をするでもない、いつもと同じ仕事をしている時に“18きっぷ”の売り上げ分が利益として加算され、その分の繁忙期の乗客数を淡々と増やしている(なおかつこのお客さんは、ニューデイズやJRホテルを筆頭とするJR関連施設にお金を落とすことも十分に想定できるお客さんともなる)わけですからね 笑。
ある意味こんなおいしい商売も早々あるものではないわけで、でしょうね~、とは改めて思いました。
近い将来確実にあるとすれば、それは廃止云々ではなく、再びとなるきっぷ自体の値上げでしょう。
改編程度でこれだけ騒がれる(=ドル箱であることが推定される、なおかつ今となってはやり直しが不可能になっているともいえる)切符自体を廃止にするなんてことは、少なくともまともな経営者がいる会社ではまず考えられない、ただし(改編時に新設された三日間用の切符の値付けを見る分に)価格の改定についてはその限りではないということで、ここについてはボチボチ覚悟は必要なのかな、なんて感じに思っています。
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